ゴドリー&クリーム『ギズモ・ファンタジア』

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77年リリースのゴドリー&クリーム1st。年明けに10ccのボックスを聴いていましたが、その中にも入っていた『ギズモ・マイ・ウェイ』の音を聴いて、もしかしたらこの音が全体的に展開されているかもしれない、と思い、デヴィッド・ボウイと共に中古で手にとった次第です。

元々3枚組ですのでボリュームも凄いですが、想像していたものと異なり、ギズモの音は思ったよりも多彩でした。1枚目のギズモ・サイドが全面的にギズモを使ったインスト集になるんですが、これは様々な情景を音にしたもので、綺麗というより比較的映画音楽のような感覚でした。そこかしこに10ccの面影はちらつきますが、それも部分的なもので全体的には難解さを印象として残します。

やはり白眉はミュージカル・サイドの方にあって、きちんとボーカルが入った曲が意外ときっちり入っていて安心させられます。『オリジナル・サウンドトラック』や『びっくり電話』で展開されたドラマティックかつ鋭い要素は確実にこの二人の要素だったんだな、ということを確認できる楽曲群です。但し、間に挟まるダイアローグはまるで英会話のテープを聴いているかのようで、英語が分からなければ流れていってしまうでしょう。外国人にはやっぱりこれはきついよなあ。

ちょっとよぎったのはブライアン・ウィルソンですね。『スマイル』や『オランダ』の頃に表出していた物語志向が音楽で紡がれていたり、ナレーションで丸々楽曲化されていたり、と発想されるものが音楽に留まらない形で音源化されている。ゴドリー&クリームの発想も単なる楽器のプロモーションを超えてひとつのストーリーを完成させる方向に発展したんですね。ある意味それは映像的でもあるし、後のプロモーション・ビデオ制作にも直結していく要素がこの時点で音として提示されたんだと思います。こういうのは音だけではやっぱりきついですね。その後、通常のアルバムのスタイルに戻っていったのも分かる気がします。