グランドファーザーズ『ウェスタン・チャーナンデ』

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以前メトロトロンから出ていたグランドファーザーズの作品がデラックス・エディションで再発されました。ここ最近は再結成もして新作もリリースする等、積極的な活動が続いていて嬉しい限りでしたが、過去の作品がこんな形で再発されるとは夢にも思いませんでした。

レコードコレクターズでのインタビューでも触れられていた通り、音が格段に良くなっています。大田譲の言う通り、確かに1stは音がポコポコしていて、それが見間違うかのように楽器の音がクリアになっています。非常に躍動感があって「強い音」に生まれ変わっていますね。以前の音もそれなりに味わいがあって、おとぎ話のような作風と相俟ってとてもほのぼのとして明るい音楽だったので好きではあったんですが、それが今回のリマスターではかなり迫ってくる音像になっている。これは確かに印象を異にしますね。

題名の由来にも驚きました。チャーナンデというのは鳥取弁の「なんちゃって」という意味なんだそうです。冒頭の曲がウェスタン風味なので、一瞬そういった作品かと思わせつつ実は異なるという意味。原題はアルファベットだったので読み方もよく分からずにいたんですが、まさか鳥取弁とは・・。

グランドファーザーズとの出会いは、やはりムーンライダーズ系の湾岸レーベルからの発売とあって、カーネーションに次ぐライダーズ弟バンド、という登場の仕方に自然と手にとったものでしたが、期待に違わず、かつ独特の捻りを土臭さも漂わせながら表現する音楽でした。その後の青山陽一の活動も一貫して追いかけてきましたが、最近の諸作のグルーヴィーさに至るまでの若干の暗さ加減がグランドファーザーズにはまだなくて、その分明るめでなごむ感じもあり、とどめはXTC好きの作風という点も踏まえてその後も聴き返すことが多いバンドでした。

初期の作品がボーナストラックに入っていますが、青山本人曰く『ボール・アンド・チェイン』や『ユーアー・ザ・ウィッシュ・ユー・アー・アイ・ハッド』のリズムをベースにしたという楽曲がまさに直系の趣で微笑ましく聴こえます。XTCはみんな好きだったんですね。

DVDの初期映像はどれも若々しいですが、この1stをリリースした後と思しき89年の映像が特にいいですね。それまでの演奏とはコクが違う気がします。

それにしてもリマスター再発でここまで蘇る作品も珍しいのではないでしょうか。久々に爽快な再発作品を耳に出来ました。