待望のリマスター再発。85年リリースの3rdアルバムですが、これはまさに金字塔です。鈴木慶一との共同プロデュースも板についてきて、ここでは絶好調。きちんとした形で再発されて本当に目出たい。
何といっても中盤の『The Green-eyed Monster』『Good Morning』『Exile』の3連発が強烈で、中でも『Good Morning』の秀逸さは群を抜いています。リズムが本当にカッコいい。『Exile』の歌詞もとてもSF的で、何という素敵な言葉遣いかと思っていたら、これはサエキけんぞうの作詞なんですね。なるほど切れ味が鋭い訳だ。
しかし未来的でありながら温かい音です。ライナーには鈴木さえ子、鈴木慶一、藤井丈司の対談がついていて、当時の録音時の苦労や全曲の解説が語られています。ドラムの音ひとつを一日がかりでとっただの、駐車場で自転車を乗り回して音を収録しただの、尋常ではない凝り方が語られていますが、最終的に前衛を優しくパッケージして世の中に届けるという離れ業をやってのけていて、これが現在でも古臭くならない秘訣なんだと思います。
リマスターは少し音圧が高め。ビートルズ以降の抑えた作りが主流の現在にあって、この手法は少し奇異に映ります。MIDIの再発はなかなか行われませんでしたし、坂本龍一の『左うでの夢』や『音楽図鑑』に至っては一度発売がアナウンスされながら延期されてしまいました。恐らく会社自体に問題があるんだと思いますが、そうした面が少しずつ作品にも影響を与えてしまう。とはいえ、作品自体は素晴らしいものなので、何だかんだ言ってもこれは必聴盤です。
坂本龍一といえば、当時のサウンドストリートで本作リリースに際して鈴木さえ子がゲストで来た際に「一番好きなのは『柔らかな季節』」と発言していたのが印象的でした。ライナーを見るとラヴェルを意識したそうですので宜なるかな。一見シンプルに見えて複雑な曲で、一時期この曲ばっかり聴いていた時期もありました。
鈴木さえ子はゴドリー&クリームの『Consequences』のようなアルバムを作りたくて音楽を始めたそうなので、これからもう一度聴いてみようかと思っています。