今月はやっぱり細野晴臣とヴァン・ダイク・パークスでしょう。
オリジナル・アルバムとしては何と18年ぶりというインターバル。それだけでも凄いですが、御年70歳にしてこの切れ味は流石の一言です。細野晴臣のトリビュートで『イエロー・マジック・カーニバル』を何とも言えないきらびやかな音でカバーしていましたが、あの触感に近い音が全編に渡って奏でられています。
ヴァン・ダイク・パークスの魅力はとにかく多彩な楽器群と摩訶不思議なストリングス・アレンジにあるように思うのですが、それに温かいメロディが加わるとほぼ完璧なアンサンブルが出来上がります。今回で言うと『Dreaming of Paris』『Hold Back Time』『Missin' Missippi』なんかがそういった曲に仕上がっています。古いようで新しい。映画音楽のようで映画ではない。『The All Golden』のセルフ・カバーも凄いな。
今回の分厚い解説や、元々シングル6枚でリリースされた経緯から成る美しいジャケットの数々、等々パッケージとしてのこだわりは半端ではありません。ジャケットはビーチ・ボーイズの『スマイル』を手がけた人や、クラウス・ヴーアマンまでもが動員されていて、生ける伝説を地で行っている様がありありと映し出されます。
ここへ来てこの強さ。68年から一回りして到達した世界はベクトルを過去に向けて尚かつ前進しているという希有な理想形を樹立しています。