高橋幸宏『One Fine Night』disc 1

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生誕60周年を記念して行われたコンサートの映像がリリースされました。全33曲。いっぺんには観れないので、まず今週は1枚目から。

先日WOWOWでも短縮版が放送されましたが、めまぐるしく変わるメンバーやゲストの紹介は一切省いた内容でしたので、こちらの完全版で味わうのが筋というもの。それにしても周囲の仲間に恵まれた人ですね。これはやっぱり人柄なんだと思いますが、やっぱり根っからのバンドマンでもある証で、協調性が恐ろしく高いんだと思います。ユーモアもあってよき先輩でもあり可愛い後輩でもある。かつ繊細だというのがポイントです。

冒頭の『世界中がI love you』は恥ずかしながらこのライブで初めて聴いたんですが、これが意外にいい曲で、今まで聴かなかったことを後悔しました。収録アルバムが『The Dearest Fool』だというんですから仕方ない。今度探してみることにします。

1枚目の白眉はやはり『My Bright Tomorrow』『Disposable Love』『前兆』と続くくだりです。若手メンバーからベテランメンバーに入れ替わった後の演奏はコンパクトながら素晴らしい。勿論曲も全盛期のものなのでいい曲ばかりなのもありますが、それにしてもメンバーのシルエットが渋い!小原礼や徳武弘文、Dr.kyOn矢口博康といったメンバーは立ち姿もスッとしていて演奏もカッコいいことこの上ないと思います。

バンドが入れ替わる前のトリプルドラムによる『Still Walking To The Beat』の豪華さも見逃せません。ドラム3人というのも凄いですが、小原礼のベースがとてつもなくファンキーで、高橋幸宏の曲であることを忘れてしまいそうです。

90年代の高橋幸宏は実はずっと聴かずにいたんですが、聴き始めてからとても好きになりました。これはおっさん向けにはとても効くんですね。哀しさがあって優しくて、日々の傷ついた心身に染み渡る音楽です。若い頃は甘過ぎて耐えられなかったこうしたAOR路線が今の年代になってこんなに響いてくるとは思いませんでした。まるでリラックスできる薬のようです。その辺りの萌芽が『Once A Fool』あたりだと思うんですが、この価値が分かるまで25年くらいかかってしまった。

その後、pupa、スケッチ・ショウとエレクトロニカ路線が続いて1枚目は終了します。スケッチ・ショウの音で場の雰囲気は一気に北欧へ飛んでしまいますが、演奏する二人の佇まいはまるでフォーク・シンガーのようで、ちょっと特殊な感じがしました。

今月はラジオ番組も高橋幸宏三昧ですし、来月のミュージックマガジン高橋幸宏特集ということで、しばらくフィーバー状態が続きそうです。