キリンジ『TOUR 2013 ~LIVE at NHK HALL~』disc 2

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なるほど。

毎週聴いている高橋幸宏のラジオ番組のタイトルは日常にある音楽という意味で「Everyday Music」というピーター・バラカンの造語なんですが、キリンジの音楽がまさにそういった感じなんですね。二人は非常に普通の人達で、奏でる音楽も左程派手なものではない。でもそこにちょっとしたスパイスがあって、日常を豊かにしてくれる。そんな感じのユニットだったんだなと改めて思いました。

2枚目は必殺の『早春』から始まり、『夏の光』『TREKKING SONG』と徐々に盛り上がって行きます。『千年紀末に降る雪は』のイントロには歓声が上がる。『エイリアンズ』はちょっと声がきつそうですが、後日談の間違いも含めてほんの少しの伝説を作り、ラストは『悪玉』で締める。最後に映る女性ファンの泣き顔にちょっとうるっと来てしまいます。

ボーナス映像ではこれまでの活動の振り返りや今後の展開についてのコメントがあって非常に興味深いですが、やはり「カッコよくありたい」という兄の気持ちがそうさせたような気もして、実際に新生KIRINJIは次期ムーンライダーズのようなバンドとなっていく可能性を秘めているような感触を抱きました。そして堀込泰行には是非ブレイクして欲しい。そうするとフリッパーズ・ギターの再来となる訳です。

キリンジAOR風の佇まいが刺激に欠けてかつ70年代風の音づくりが古参音楽ファンの興味をそそらないような立ち位置を築いてしまっている感があります。でもファンを大切にする姿勢はブランドの本質を突いているし、何より哲学がしっかりしていて前向き、前のめりである点で学ぶべきところは多い。ここを見抜けなければ音楽ファンではないと言い切ってしまえると思っています。頑張って欲しいなあ、今後も。

ということでトータル238分の大作でした。観ても観ても終わらない。でも不思議と観終わってスッキリする作品でした。