No Lie - Sense『First Suicide Note』

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ナゴム再始動!

ということで鈴木慶一とケラのユニットによる作品が出ました。ナゴムといえばカーネーションの『夜の煙突』や電気グルーヴの前身、人生などの作品を世に出して来たレーベルですが、当時は有頂天のレーベルという印象が強くて、いわゆるインディのアングラな感じが漂っていたのであまり真剣には聴いていませんでした。それがここに来て再始動ということはケラも総括の時期に入ったということか。端的に気まぐれなのかもしれませんが。

音は想像通りのナンセンスですが、『だるい人』のセルフカバーも入っていてこれが痛快。楽しそうに歌っていて微笑ましい。「金さえあればの40代」というのはジャストその年代の自分としては染みますねえ。もう少し全体的にアバンギャルドかと思っていましたが、結構ポップで少し安心しています。ニューウェーヴというのは基本線ポップスの路線をギリギリ外さないという意味で突き抜け方が絶妙だったんだなあ。人に聴かせられないという意味では一貫していますが。

有頂天も失礼ながら真剣に聴いた覚えはないんですが、確かメジャー進出を図った時期があって、その際にレンタルで借りたような気がします。確かカセットブックかなんかを借りたような覚えが・・。ちょっと思い出せない。ポップで良かったんですが、少し憂いもあったような甘酸っぱい記憶があります。ケラはその後演劇の方向に行くので、もともと劇団員の息子の鈴木慶一としては関わるのも必然かもしれません。

ここのところあがた森魚を聴き直しているんですが、振る舞いに近いものがあってある意味演劇的な音楽というものは声の質と過剰なストーリー性という意味で一直線状にあるような気がします。それがナゴムにも色濃く出ているんじゃないかなあ。「意味無し」がメッセージになる。それは80年代に花開きましたが新世紀になって一回転して提示されたこの音楽はどう聴けばいいんでしょう。気楽さとも違う。鎮魂歌か、あるいはノスタルジーか。まあ元気だからいいかな。

高橋幸宏ユリイカを読んで『香山リカのきょうの不健康』を楽しく読みました。ここで出て来ている高橋幸宏鈴木慶一、大槻ケンジという人達は一様に精神病を抱えたアーティストで、そのあたりの象徴としてナゴムが存在していたとも言えそうです。「ビョーキ」が流行った80年代。今では大流行りですがその辺りでも先端を行っていたという痛々しい事実。結構ナイーヴな音楽のような気もします。