ジョン&ヨーコ/プラスティック・オノ・バンド『Sometime in New York City』disc 2

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フランク・ザッパを初めて知ったのはとあるFM番組の特集でした。既に大量のアルバムをリリースしており、その活動の多彩さに目眩がしたものでしたが、一貫してその奥にはユーモアが存在していた。今回もやはりオノ・ヨーコの声は聴くに堪えないものがありますが、バックがマザーズだとそこには演奏の構築性と同時にユーモアがあるので左程恐ろしい代物にならない。ここがミソですね。

70年代初期のマザーズはフロ&エディのコミカルなステージが印象的な演劇めいたものでしたが、その雰囲気にジョン・レノンオノ・ヨーコが割って入ってもその個性の強さにかき消されてしまう。ファンも含めて一種変態めいたステージを繰り広げていたザッパの世界には現代アートも骨抜きにされてしまいます。

2曲目は今後も永遠に聴き返すことはなさそうですが、ザッパとの共演であるD面はマザーズの一連の活動と繋げて味わえそうです。基本音はモコモコで決して良いとは言えませんが、そもそも本作でジャケットをパロディ仕返された『フィルモアマザーズ』自体がこんなもんなので余り気にはならない。しかもザッパはこれだけではないですからね。一瞬出てくる『キング・コング』は『アンクル・ミート』のラストに入っている組曲ですが、『アンクル・ミート』は鈴木博文が学生の頃毎日帰宅してはヘビー・ローテーションで聴いていた作品でもあります。それがジョン・レノンのファンの耳に届いていたんですね。

それにしてもヨーコの奇声は邪魔だな。最後の最後まで絶好調ですが、これを聴いているとマザーズの前衛性に相性が良いのではないかと一瞬思ってしまう。マザーズでも奇声はよく出てきますが、もうちょっとユーモラスなんだよなあ。しかしこのディスクは一般の耳にはきついでしょう。余り売れなかったのも分かる気がします。