ジャコ・パストリアス『ジャコ・パストリアスの肖像』

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ジャコ・パストリアスを初めて知ったのはご他聞にもれずジョニ・ミッチェルの作品でした。歌うようなベース、その後映像で観た余りの刺激的な姿に、世の中には物凄い人がいることを改めて痛感したものですが、ジャコ本人の作品はアンソロジー以外は実は初めて耳にすることになります。どうしてもフュージョンが苦手なのでなかなか手が出せませんでした。

本作のリリースは76年。ジョニ・ミッチェルの『逃避行』も76年ですので、丁度同時期となります。同年にはウェザー・リポートへの参加もありますので、この時期はかなり多忙だったんだろうと思いますが、まさに華々しいデビューを飾った頃なんでしょう。

音の方はほぼ想像通り。説得力のある呟きのようなその音はむしろ『Continuum』のようなシンプルな曲で真価を発揮するように思います。基本的にフュージョンの明るさにどうしてもついていけないところがあるので、派手な演奏曲は何となく耳を通り過ぎていってしまうんですが、この人のベースはその存在感が空気を変えてしまう程の力を持っていますね。全面参加しているハービー・ハンコックと共にふとしたフレーズが耳を引っ掻いていきます。

思うに立ち位置として「強烈な裏方」という存在でいた方が引き立つような気がします。ベースでここまで全面に立てるのは稀なケースだと思うし、唯一無二だとは思いますが、どうしても楽器の性格上メインは難しい。別の個性との衝突に醍醐味があるのではないか。独白のような楽曲に魅力を感じる反面、バンド形式の楽曲ではフロントに誰かが立っていた方がより演奏が映えてくる。誠に僭越ながらそんなことを感じました。テクニックより叙情を求めているからかもしれませんが・・。いずれにせよ聴き込み甲斐のある音だと思います。