パール兄弟『TOYVOX』

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何故かここへ来てパール兄弟が聴きたくなって唯一中古屋にあった本作を手にしました。89年リリースの4作目です。

パール兄弟は何となくその過剰な分かりやすさに違和感があってずっと手にとらずにいました。唯一引っかかったのが『鉄カブトの女』くらいなんですが、それでも当時は手が伸びませんでした。従って6年前の再発時もスルーしてしまいましたが、今から考えると惜しかった。これから気長に探していくことにします。

89年4月の発売ですが当時がどんな感じだったか、その月のミュージックマガジンを引っ張り出してみました。前月にXTCの『Oranges & Lemons』が出ています。実際には本作も構築系の音で、非常に緻密に音を埋めている印象があります。結構演奏もタイトでストレートなビートが伝わってきますが、趣向が凝らされた音になっているので比較的派手。音色的には80年代の技術がある程度行き着いて、来るべき90年代の下品な派手さに至る一歩手前といった感覚です。

そろそろCDがメインになりつつあった頃で、先のXTCもこの作品からCDで買ったような記憶があります。丁度メディアの変り目にあった時期のようで、ミュージックマガジンもCD紹介のコーナーが巻末に別で組まれている。考えてみれば今も配信系への過渡期かもしれませんが、何となく共存していきそうな気配もあります。自分はパッケージメディアでずっと行きそうな気がしておりますが・・。

作品に戻ると、やっぱり引っかかりは少ない。スティーヴン・スティルスのパロディみたいな曲もあったりしますが基本は突き抜け方が甘めかな。パール兄弟は全体的にそうだったように感じていたので、その辺りがムーンライダーズとの違いかな。アレンジなんかカッコいい曲もあるので端的に楽曲の魅力の差かな、とも思います。