『ナイアガラ・トライアングル Vol.2』

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大滝詠一関連で未入手だった1枚。先週ふと立ち寄ったBook offでたまたま目にしました。2枚あったんですが、リリースが新しい方を選んだら20周年記念盤でした。30周年はカラオケとの2枚組ですが、こちらはボーナストラックが沢山入っているのでこれで正解です。

82年の作品ですが、当時は『ロング・バケイション』の後、ということでまだはっぴいえんどもよく知らなかった頃のことでしたから王道路線には手が伸びませんでした。『A面で恋をして』はよくラジオ等でかかっていましたので馴染みはあるし綺麗なメロディだな、とは思っていましたが自分とは遠いところにありました。何といってもYMO全盛期でしたので。

Vol.2は佐野元春杉真理との3人。このあたりもずっと意外な組み合わせでしっくり来ていなかったのが手が伸びなかった理由です。まるで学校のようにその後巣立っていった人達は各分野で活躍していますが、本作で聴ける二人の楽曲はこの時点で既にほぼ完成形にある。出発点としてはとても豪華なプロダクションですね。佐野元春はその後独自の進化を遂げますが、杉真理の方はここでもう初期ビートルズ愛が爆発しています。

御大の楽曲はもう殿堂入りの貫禄で、この後『Each Time』へ進む訳ですが、結果論的には既に到達点に至っている感があります。その後同趣向の再生産を行うことには興味が湧かなかったんでしょう。ある意味どう転んでもこの美学は崩れない。それをよしとしなかったのではないかと。それでよかったようにも今となっては感じます。

大滝詠一山下達郎の場合は楽曲よりもその言説に面白味があって、特に大滝さんの場合はそれもひっくるめての作品といった趣がありますから、作品自体が王道でも背景を知ってなんぼの世界でもあります。従って楽曲の理解には時間を要する訳ですが、そこまで考えなくてもポップスとしては極上に仕上げている。若干当時の音としてビートの音色に違和感がある瞬間も垣間見えますが、それも極一部。基本はもう一分の隙もないポップスとなっています。そこが刺激に欠けると当時の自分には映ったんでしょう。その感覚の名残はまだ若干残っているとも感じました。王道過ぎて繰り返し聴く気持ちにならない。これが後期大滝作品の自分の捉え方です。そしてしばらく間を空けて聴くと染みてくるんですね。