トーマス・ドルビー『The Golden Age of Wireless』

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『光と物体』の邦題でリリースされていたトーマス・ドルビーの82年1st。09年にリマスターされて大量のボーナストラックとDVD付きで再発されていました。その事実を知ったのは比較的最近のこと。タワレコ等では取り扱いを中止したりしていて下手をすると入手困難になる可能性も出てきましたので今回慌てて注文しました。

この1stは発売当時は確かレンタルレコード屋で借りて聴いたような記憶があります。その時の印象は「意外と地味だなあ」というものでしたが、今回改めて聴いてもその印象は拭えませんでした。大きな理由はやはり『She Blinded Me With Science』が収録されていたかったことだと思います。今回はボーナストラックとして加えられていますが、とにかくこの曲のポップさが突出している。トーマス・ドルビーといえばこの曲、という印象を決定的にしている曲ですね。このファンキーでコミカルなセンスの良さが他曲に反映されないのは何故なんでしょうか。その後も『Hyperactive』なんかで見受けられるこの独特の軽やかな構築感は他に類を見ないものだと思います。

本質的には恐らく愁いを帯びたフワッとした楽曲がこの人のコアなのかもしれませんが、それだけではやはり楽曲が耳を通り過ぎていってしまう。静と動を兼ね備えたアーティストだと思いますが、「静」の部分が若干多過ぎるきらいがある。いい曲ではあるのでもう少し聴き込む必要がありますが・・。

音圧は若干低め。収録時間が長いので耳には優しく響きます。確実に当時の音ではありますが、古びていない。時代に流されない音色選びがなされているなあ、と感心しました。