トッド・ラングレン・アンド・ユートピア『Live At The Electric Ballroom Milwaukee』disc 1

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トッドのアーカイヴ・シリーズはものによっては音の悪いものも多いんですが、先日リリースされた本作はラジオで当時オンエアされた音源をリマスターしたとの触れ込みでしたのでそこそこの音だろうと期待して購入しました。実際そこそこですが、音は多少ポコポコしていて左程のものでもない印象です。まあ悪くない、といった感じでしょうか。

78年10月のライブ。解説によると『Back To The Bars』の好評を受けて敢行されたライブとのことで、ほぼ絶頂期の演奏が楽しめます。『Back To The Bars』はトッドのソロ色が強くて、印象的には『Initiation』からの繋がりを強く感じさせる内容でした。勿論『Faithful』や『Hermit of Mink Hollow』からの曲も収録されていますが、それまでの集大成的なライブなのでその当時の「今」を現し切れてはいない。それが本作では表に出てきていて、かつユートピア主体、というのがポイントです。

この頃のトッドのリリース・ペースは物凄くて、77年にユートピアとして2枚、78年にソロとして2枚のアルバムを発表しています。その内の1枚が『Back To The Bars』だった訳ですが、78年のそのライブが5月、こちらが10月ですので年に2回のツアーをこなしていることになります。非常に脂が乗っている時期だったんですね。演奏にも迫力があります。

同じくライブ盤の『Another Live』が75年リリース、『Ra』と『Oops! Wrong Planet』が77年リリースですので、77年を境にプログレ路線からポップ路線に変貌していったと見ることが出来ます。本作では『The Seven Rays』も演奏されていますので、その過渡期の少し後、といった感じで捉えることもできそうです。ここら辺が変り目だったんだなあ。

体制はトッド・ラングレン、ロジャー・パウエル、カシム・サルトン、ウィリー・ウィルコックスという後期不動のラインアップで、もうしっかりフォーメーションが成り立っている。4人で奏でるコーラスが凄いんですよね、ユートピアは。演奏力も確かです。コンパクトながら多彩な音を奏でていて単純に凄いなあ、と思います。来日した際に観た時も感じましたが、4人でここまで多彩な音を出せるというのは各々の専門性が高いことの現れなんでしょう。

成熟していく前の躍動感のあるユートピアが堪能できる作品だと思います。