高橋幸宏&META FIVE『テクノリサイタル』

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これは今年のキーになる1枚。

年明けに行われた一夜限りのライブをパッケージ化した作品ですが、昨今の80年代リバイバルを地でいった作品ということで、反響の大きさに作品化を決めたと言われているライブ盤です。一時期のWORLD HAPPINESSの音像を踏まえて「今の音でBalletとかやったらいいと思うんですよね」と会社の後輩が言っていましたが、まさにそれを実現した形。鍵を握っているのは本人自身も語っている通り、テイ・トウワ砂原良徳です。

ここに小山田圭吾を加えて最近ではO.S.T.として活動もしているYMOフォロワー組が当時の音を今の音として蘇らせている。この彩りが単なる懐メロで終わらない作品の高揚感を演出しています。とにかく冒頭の『Cue』『Ballet』の2連発での盛り上がりは尋常ではありません。当時を知っているリスナーからすると嬉しくてたまらない。それをUp to Dateして尚かつ当時の音の再現も試みる。これはやっている方も光栄でしょう。嬉しさが音に伝わってきます。

高橋幸宏の最近の活動は極度の二面性を前面に押し出したバランスの良い、あるいは分裂気味な傾向を呈していますが、従来細野晴臣の得意技だったこの二面性をここへ来て表面化させているのは好調の証だと思います。自らのルーツである60年代ポップスをIn Phaseの方で表現していますが、考えてみればこれは散開以降の甘くメロウな路線、あるいは90年代の日本のポップスの追求が別の形で実っているとも考えられる。そうしたオーセンティックな路線と、80年代初頭に時代とリンクしたテクノ路線を同時に内面に抱える人だからこその離れ業を繰り出している。それが今になって表現として表に出るようになったというのは非常に感慨深いものがあります。これは本人の持つポップスへの造詣とライブ活動で鍛えられた感覚がなせる技なんだと思います。

絶好調ですね。WORLD HAPPINESSが楽しみです。