山下達郎『Big Wave』

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84年リリースの作品が30周年バージョンとして再発されました。実はきちんと聴くのは初めてなので、価格が安いこともあって今回手にしてみることにしました。それにしても良心的な価格。ポップスの何たるかを理解しているからこその戦略という意味で非常に立派だと思います。

聴いた印象はおおよその曲が一度は聴いたことのあるもの、ということもあって非常に安心感を持って聴けました。A面がオリジナル、B面がビーチ・ボーイズのカバー、という構成ですが、カバーも含めて山下達郎の音楽となっている点は流石だと思います。とはいえやはりビーチ・ボーイズの楽曲に比べるとオリジナルの方は憂いが少ない。つくづくビーチ・ボーイズというのは哀しげな旋律を持つグループなんだなあと実感しました。そこがいい訳ですが。

しかしとにかく完成度が高くて、逆に聴いていると息が詰まりそうになるのが難点。恐らくはラジオから流れてくる分にはBGMとして最適なんでしょうが、ヘッドホンでじっくり聴いているとその世界観に圧倒されてしまって押しつぶされそうになる。聴後感は爽やかなものではなくて覆われてしまうような圧迫感があります。これは大滝詠一にも言えることですが、構築感の果てにある隙のなさがその言説と相俟って聴く側に迫ってくる感があります。普通に聴いている人にはそこまで届かないんでしょうが、その情報量の多さが聴く側の知識に比例して肥大化するとでも言いましょうか。エコーがたっぷりと施されているのも一因かと思います。

ボーナストラックの『Breakdance』にはびっくり。未来派野郎みたいです。こんな曲も作るんですね。アルバムに入れなかったのは正解だと思います。あまりにもカラーが違い過ぎますので。山下達郎ビーチ・ボーイズジェイムス・ブラウンで出来ている。その中のビーチ・ボーイズ的な側面が前面に出たアルバムが本作なんだと思います。