ムーンライダーズ ライブ『Ciao! Mr. Kashibuchi』

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12/17、かしぶち哲郎の一周忌に行われたムーンライダーズの復活ライブに行ってきました。もう二度と観れないと思っていましたし、これが最後かもしれませんので、しっかりと記憶にとどめようと足を運びました。

セットリストは下記の通りです。
M-01 Frou Frou
M-02 Beep Beep Be オーライ
M-03 二十世紀鋼鉄の男
M-04 狂ったバカンス
M-05 気球と通信
M-06 Kのトランク
M-07 青空のマリー
M-08 駅は今 朝の中
M-09 A Frozen Girl A Boy in Love
M-10 9月の海はクラゲの海
M-11 Morons Land
M-12 Weather man
M-13 無防備都市
M-14 モダーン・ラヴァーズ
M-15 トンピクレンッ子
M-16 最後の木の実
M-17 スプーン一杯のクリスマス
M-18 ハバロフスクを訪ねて
M-19 スカーレットの誓い
M-20 6つの来し方行く末
M-21 釣り糸
アンコール
M-22 Lily

例によってオープニングのアナウンスはユーモアたっぷりで、「今回はロビーでは演奏しておりません」等といった活動休止ライブのことを知っていなければ分からないコメント等も織り交ぜた内容。ファンも含めて全員が関与者、といった感覚です。

オープニングは実際には「Last Serenade」が流されてスクリーンに月とタイトルが映し出されました。その後、どの曲で始まるか、と思っていましたが、ほぼ予想通り「Frou Frou」でスタートしました。スクリーンが上がってメンバーの姿が現れた瞬間の嬉しさは尋常ではありません。演奏もタイトで、3年前と変わっていない、というよりテンションを持続し続けている。ああ、今ムーンライダーズがまた目の前にいるんだ、と思うと感慨もひとしおでした。

前半はかしぶち哲郎の曲を畳み掛ける構成で、「二十世紀鋼鉄の男」や「狂ったバカンス」といったレアな楽曲も聴くことが出来ました。「気球と通信」はアコースティックなアレンジでしたが、「ボクヲヒトリニシナイデホシイ」という鈴木慶一のボーカルがまるで泣いているかのようで、少しグッときました。その後に続くフレーズが「コレカライツモキニシテイルヨ」ですから、とても優しい歌詞を作っているんですよね。

このままかしぶち作品で通すのかと思っていましたが、中盤からは各メンバーの曲に移りました。しかし恐らくは各メンバーがかしぶちさんに贈る曲を選んだのではないかと推測します。その中でも特に鈴木博文の「駅は今、朝の中」が最高でした。この日のベストアクトだったんじゃないでしょうか。元々大好きな曲でしたが、演奏もタイトで素晴らしく、コーラスワークも力強い。鈴木博文のボーカルは年々良くなっているように思います。そして最後の歌詞を「君のこと好きだった」と変えて歌ったところで目頭が熱くなりました。周りの複数の女性も目頭を押さえているようでした。自分にとってはここがピークでしたね。

「A Frozen Girl A Boy in Love」も渋くて良かった。武川雅寛の曲は振り返ってみるとどれも味があっていいんですが、中でも最高級のこれをやってくれるのは本当に嬉しい。

その後は「モダン・ラヴァーズ」での鈴木博文がフロントに立った演奏や「トンピクレンッ子」の相変わらずの白井良明の盛り上がり等、ライダーズの現役感がまだ続いているかのような元気な演奏がなされ、ここでは追悼というより復活色が濃かったように思います。白井良明の「みんな、ムーライダーズは好きですかー」といった掛け声は、今後の継続的な活動をファンに問いかけているかのようでした。実際にメンバー紹介のコーナーで初めてマイクをとったドラムの夏秋文尚のコメントでも、ライダーズは皆元気なのでまた必ず復活します、といった内容が語られていたので、ここでの復活感が何かしらの形で後を引いてくることはあると思っています。

「6つの来し方行く末」ではかしぶち哲郎のパートを会場に歌わせたりもしました。ここでも最後の鈴木博文のボーカルがむせび泣くようで良かった。本当に心がこもったステージだったと思います。ラストは何かな、と思ったらはちみつぱいの「釣り糸」をインストで演奏しました。ここではまるでかしぶち哲郎の歌が聴こえてくるかのようで、きっと天国で一緒に参加しているんだろう、と思わせる演出です。

砂丘」や「バック・シート」といった楽曲は演奏されなかったんですが、「釣り糸」同様、「砂丘」なんかもやっぱりかしぶち哲郎のボーカルじゃないと成立しないと判断して、あえて選んでいないんだろうな、と思います。それは「釣り糸」をインストで最後に演奏したことで何となく理解できました。

アンコールは息子さんも加わっての未発表曲。まるでコンサート・フォー・ジョージのようです。かしぶち哲郎の不在は残念ですが、こうして常に一緒にいるんだ、というメッセージを形にしたイベントを行えることそのものが貴重だな、と感じたコンサートでした。至宝だと思います。