坂本龍一『左うでの夢』disc 2

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今回の再発は、ボーカルレスのバージョンが別ディスクでついてくる優れものです。マスターが違うということで、単純にカラオケバージョンが音質が良くなっているものとばかり思っていましたが、曲によってはこれは別ミックスですね。

一番驚いたのは「Relache」で、本編にはない演奏パートが中盤に収録されています。最終的にはカットされた演奏部分なのでしょうが、聴き慣れた耳には驚かされました。途中で展開が異なるなんて・・。びっくりです。

「かちゃくちゃねぇ」では聴き慣れない音が随所に被さっていました。当時サウンドストリートで番組のテーマ曲を制作する過程を特集した回がありましたが、最終的に「フォト・ムジーク」と題されるその楽曲は制作の初期段階ではメインのメロディがつけられていました。ところが、終盤になってそれは削除され、曲の最後の方で少しだけ現れる音になってしまいます。こうした削除していくアプローチ。制作過程でシンプルにしていくことに驚かされましたが、今回そのことを思い出しました。結果としてスリムになることが功を奏することがある。

「Tell'em To Me」でもパーカッションやドラムの音に変化を持たせたアレンジが残っていたり、「Living In The Dark」で聴こえるはずの音が聴こえなかったり、と細かな変化はいたるところにあり、何度も聴いて体の一部になっている作品だからこその発見が随所に存在します。よくあるバージョン違いは概ね退屈なことが多いんですが、自分がよく聴き込んでいる作品であればこんなにも面白く聴けるのか、と認識を新たにしました。何度も聴き返すたぐいのものではないですが、やっぱり嬉しい特典です。