グレイトフル・デッド『From The Mars Hotel』

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遡って74年作。こちらはスタジオ盤ですが、コンパクトながら耳に引っかかりを残す内容です。ただ単に流れていくものかと最初は思っていましたが、「Unbroken Chain」での曲中の奇妙な金切り音に彼岸の音楽を感じました。曲自体も結構いいと思います。

演奏主体のバンドだからライブで真価を発揮するのだと思いますが、そういったバンドの場合スタジオ版が凡庸になるケースが多い。フィッシュもそうだしこのデッドも例外に漏れません。初期にCD化された音源なのでリマスターで聴くとまた変わるかもしれませんが、音自体も小さめで淡々としていて普通に聴くと通り過ぎていってしまう。そこに隠れているものに気付けるか。こうした訓練はザ・バンドを聴いていた時のことを思い起こさせます。アメリカのルーツバンドってみんなこんな感じなのかなあ。

デッドの場合パブリックイメージがドラッグにあるので、音楽自体が見過ごされがちになるきらいがあるんですが、イメージで過激さを求めて聴くと肩透かしをくらう穏やかさなんですね。かつ音楽だけではその存在を規定できない。つくづく難しいバンドですが、身を委ねることがどこまでできるかにかかっているようにも思いました。