キャプテン・ビーフハート『美は乱調にあり』

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これは夢のようだ。

ヴァージン移籍後の後期2作が目出たく再発されましたが、今回は高音質盤のプラチナSHMで購入してみました。事前に評価を目にしていたものの、ここまで微細な音が再現されているとは。これがリマスターの効果なのか、ディスクの性能なのかは聴き比べていないので分かりません。ただ聴こえてくる音は尋常ではない臨場感で、まるで息づかいが伝わってくるかのよう。驚きましたね。

肝心の作品の方はもう文句無しで、特に「Dirty Blue Gene」の恍惚感は全世界の人に味わって頂きたい。復活後の御大は全盛期にあった角が取れて、生ける伝説としてフォロワー、信者を味方に付けつつ突き進んだ印象があります。勿論60年代後半から70年代初頭のマジックバンドによる演奏もいいんですが、若干独裁体制による歪みも見え隠れしていて、JBやジョージ・クリントンのような絶対的リーダーに、奇才であるが故になり切れなかった、あるいは商業的な失敗から金銭面でつなぎ止めが難しかったことによるモチベーションの低下が分解を余儀なくされた感があるんですが、復活後はもう周囲はファンですので、そんなことはどうでもよくて、御大は象徴として輝いています。少し丸くなった上での狂気。その抑制された狂気に潜む圧倒的なエネルギーは最早他の追随を許さないし、端的にカッコよくて痺れます。

 

ほぼ完璧な再発。この流れが続くことを切に願うばかりです。