テテ・モントリュー『Tete!』

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最後は74年録音のピアニストの作品です。とにかく弾きっぷりが凄いですが、1曲目に「Giant Steps」が収録されていることがポイントでしょう。

「Giant Steps」の意味は一音毎にコードが変わっていくことで譜面上の移動が大胆に大きく行われることが由来のようですが、知識がなくて聴いていても超絶に難しそうな曲であることは何となく分かります。それにしてもジャズのセッションを演奏するプレーヤーの人は本当に譜面を見てその場で即興演奏をしているんでしょうか。だとしたら凄いですね。まずコードを覚えた上で、その中で音をどんどん移動させる。ある一定のルールに基づいて拡散を防いで、その上で自由に発展させる。頭のいい音楽だなあと思います。

聴く側はそこまで考えずに身を委ねれば良いと思いますが、そこにちょっとした知識が加わると演奏の凄さが分かったり解釈の幅が理解できたりと楽しみ方が広がる。一方、プレーヤーの方に廻るとその知識がまずは前提となり、その上でテクニックが競われる。そう考えると演奏者の方がスノッブになりやすい。そして一歩間違えるとそれが閉鎖的になって、音楽の楽しさから遠のいていってしまう。そんな感じでしょうか。

語りが音楽を駄目にするとは思いませんが、過剰であると本来の目的から離れていく。但し楽しみ方が複層的であることは否定されるものではなく、理解した瞬間に楽しみ方が増えるという点で作品の寿命を長くするんじゃないかと思いました。