ザ・ビートニクス『M.R.I.』

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01年にリリースされたこの作品は唯一リアルタイムで聴かなかったアルバムです。ワールドハピネスで収録曲の「Dohro Niwa」が演奏されたのをきっかけに中古で入手してやっと聴いたような記憶がありますが、その位存在感が希薄な作品でした。

聴いた印象は当時と変わらずやはりパッとしません。ビートニクスに常に流れているポップさがここにはないように思います。音自体も重いし、どこか雲の中にいるような見通しの悪さと混沌を感じます。

01年というと高橋幸宏はスケッチ・ショウ結成直前。ムーンライダーズは『Dire Morons TRIBUNE』リリース前ということで、双方とも過渡期に当たる。そんな中、「21世紀になっても何も変わらない」という怒りから制作に至ったという点も踏まえて、ここには必然性が若干欠けているようにも思います。

その後、お二方とも非常に活動的になっていくので、晩年の絶頂期直前の狭間にリリースされたような作品になっています。何度聴いても耳に残るのはドノヴァンのカバーの「Wear Your Love Like Heaven」というのは淋しいところです。

しかし更に10年の時を経て再度復活があろうとは予測していませんでした。お二人が活動している限りはずっとこのユニットは続いていくというこの上ない安心感。数少ない邂逅による作品を味わっていけるというのはこの上ない喜びです。その時期その時期の環境や状態から出てくる作品の雰囲気が変わっていく。長く活動されている方ならではの楽しみではないでしょうか。ですので、この作品も単独で楽しむものではないと考えています。あくまで長い時間軸の中での通過地点であるということでしょう。