ザ・ビートニクス『THE BEATNIKS 19812001 Films』

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最後は映像集です。

まずは81年1stの際にリリースされたビデオクリップ集ですが、何となくリリースされていたという記憶はあるものの、きちんと観るのはこれが初めてでした。ジャケットのイメージからインダストリアルな、工場の風景がふんだんに取り入れられたものかと思っていましたが、多少違いました。何となく『ウィンター・ライブ』と同等のイメージがあったんですね。

しかしながら、工場のイメージはほんの少しに留まり、むしろ都市や交通を思わせる映像が多かった。ケミカル・ブラザーズの延々と車窓を映し出す映像やコーネリアスの道路やモノレールの映像に近い。それの原始版といった趣です。最後の「Inevitable」で土方の役をお二人が演じているのには思わず笑ってしまいました。音に映像をジャストに合わせるカッコよさがまだこの頃の技術ではハードルが高かったんだろうと思います。監督は鋤田正義ですが、後年の辻川幸一郎にも影響を与えていることでしょう。

2番目は87年のライブが3曲。ギターは大村憲司、サックスは矢口博康、ドラムは矢部浩志、と豪華な面子。オーディションに受かったばかりの高野寛の姿も見えます。大村憲司はやっぱり渋い!メンバーの演奏シーンが余りアップで映らずに引いた映像が多いのが少し残念です。もう少し沢山収録して欲しかったなあ。

そして最後が01年の映像ですが、前半は四つ打ちのデスクトップミュージックでテクノ、アンビエント系の音を鳴らしています。これはちょっと・・。このまま終わったらどうしようと思って観ていましたが、後半はバンドスタイルになりました。ここにも矢口博康高野寛の姿が見えます。ちょっと演奏が綺麗過ぎるかな。

この映像を観ていると、ここ最近の復活したビートニクスやMETA FIVEの演奏がいかに洗練されたものかが良く分かります。pupaを経たのが結構大きいのではないでしょうか。エレクトロニカと生楽器のハイブリッドを試みてきた成果が出ているし、原曲を忠実に再現しながらも新しい音を取り入れている今のスタイルは究極なんじゃないかと思います。

ということで、今回のボックスはとても丁寧な仕事がなされていて非常に満足しました。30年という途方もない年月を感じさせない若々しさが伝わってきます。未だに元気で現役感の漲るお二方に尊敬の念を抱きつつ、今後も可能な限り長く続けていって頂きたいと切に願っております。