ムーンライダーズ『最後の晩餐』

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結成10周年の狂騒の後、5年のインターバルを経て91年にリリースされた作品。ここでは白井良明が元気です。

岡田徹が再始動を説得して各メンバーの元を訪れた際に白井良明は「思い切りギターが弾けるならいいよ」と言ったそうですが、実際弾きまくっています。ただ、それよりも「Come sta, Tokyo?」のような自作曲の勢いがあって、全体的に覆っている大人のロック感から一歩離れた爽やかさを称えています。

リリース当時は詞の世界が完全に年配層の視点となっていて面食らいましたし、ハウスやドラムンベース系の流行に自分達なりの回答を出した体のサウンドに若干の辟易感を覚えましたが、今となってはそうした表面的な装いよりも楽曲の質が時代を超えているかどうかに感心がいきますね。

暗示的な「Who's gonna die first?」が結果としてかしぶち哲郎のものとなり、武川雅寛が兆しを見せるといったリアリティを今となっては有してしまっていることがある意味恐ろしくもあるのが現状ですが、それでも復活作としては一歩突き抜けた成熟を、あくまで表面的には軽やかに、奥にはドロッとした情念を伴って世に提示したという意味で中間地点の記念碑的作品として意義深いアルバムとなっています。

冒頭はアンディ・パートリッジのメンバー紹介で始まってラストは激シブの小品で閉めるという憎い構成も見逃せません。