プリンス『Emancipation』

f:id:tyunne:20181114204527j:plain

坂本龍一が「車で聴く音楽でお勧めのアーティストは?」との問いにプリンスと答えていたことに象徴的なように、プリンスというのは感性の増幅装置として機能する音楽を提供できる人だと思います。

本作はワーナーからの解放を祝った3枚組の大作ですが、そのボリュームとは裏腹にとても聴きやすい曲が並んでいて、まさに何かをしながら聴くにはうってつけの音楽です。音の感触も96年当時の比較的柔らかなファンクで、曲調も様々。当時結婚したてということもあり多幸感溢れる作風となっています。

既にプリンスが時代の最先端を走っていた時代は過ぎ去り、殿堂入り寸前の悩めるアーティストと化していた時期のアルバムですが、この多作ぶりは本当に凄い。ストックが大量にあるというのはよく言われることですが、それにしても物凄いボリュームです。発売当時は聴き込む暇もなくしばらく放置していましたが、通勤時などに流し聴きしていると妙に引っかかる曲が多いアルバムであることに後になって気付きました。楽曲の質が単純にいいんですね。

その後ワーナーに復活したりとか、名前が元に戻ったりとか、何かと騒がしい方ではありますが、楽曲はエターナル。永続性を持ったアルバムだと捉えています。