metrotron records 25th anniversaryライブ『軌跡』

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2012年に行われたメトロトロンレコードの設立25周年ライブが3年の時を経て発売されました。正直高くて見送ろうと思っていましたが、カーネーショングランドファーザーズ等、その後もずっと聴き続けているアーティストのライブが収録されている、かつ決め手は初回限定で映像版のDVDがつくという情報を見て思わず買いに走りました。結果は大正解。ムーンライダーズ同様、動く姿がめったに見られない人達の演奏が味わえるだけでも貴重この上ない作品となっています。

収録されているのはカーネーショングランドファーザーズ青木孝明、THE SUZUKI鈴木博文の5組。いずれも充実した演奏ですが、特に前半は素晴らしい。

ここで思うのは以前ライダーズのメンバーが語っていたメジャー/マイナーの問題です。ムーンライダーズというバンドは決してブレイクすることはなく、かといって全く世の中に知られていない訳でもない。その微妙な境界線を歩いている。その振る舞いが若手にも継承されているという話です。つくづくビジネスが上手くないというか、自らそれを否定しているというか。今回のこの25周年だって相当な強者揃いにも拘らず、ついぞ告知は見たことがないし本作の発売もアマゾンでたまたま知ったに過ぎません。

また一部を除いて演奏者にオーラがないのも気になります。スタジオミュージシャンのようで普通のおじさん達のよう。それがまたいいんですが、やはり存在感は必要です。そういった意味では鈴木慶一直枝政広武川雅寛は存在感がある。社主の鈴木博文は飄々としていて一瞬見逃しそうになりますが、それがこの人の個性です。

元々は兄貴が弟に「もう少し外に出ろ」とけしかけて集まって来た仲間達を世に出す形で立ち上がって来た湾岸発のレコード会社なので、必然的に和気あいあいとした、かつ東京の辺境に佇むアンダーグラウンドな雰囲気を携えています。

ライブは3時間半に及んだようですが、本作も音と映像で約4時間近く味わえる大作となっています。最後の鈴木博文のインタビューも温かくて物凄くいいですね。