小沢健二『指さえも/ダイスを転がせ』

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97年という年は小沢健二にとって転機になった年でした。ここで発売されたシングルはその後決して作品としてまとめられることはなく、次作『Eclectic』まで4年の歳月を要することになります。バブルのようにブレイクした90年代の終りを告げる年が97年だった。それに何故自分が気付かなかったのか。CDシングルの中古価格を眺める度に悔しく思います。

そんな97年にリリースされた第2弾のシングルがこれ。本作の前に『Buddy/恋しくて』があり、この後に『ある光』、『春にして君を想う』と続きます。既にこれだけで充分アルバム1枚分の曲数が揃っているような気がしますが、そこはリリースがなかった。相当業界からの離脱にリアリティがあったのでしょう。『球体の奏でる音楽』あたりで大分変化して来ていたので意識はしていましたが、よもや活動休止になるとは思わなかった。

小沢健二は最近また復活してライブ活動を再開していますが、前回も津田大介が鋭く指摘していたように、恐らく金がないんじゃないか、というシビアな問題が提示されており、それが確かだとすると非常に哀しくもあり合点がいくことでもあります。原盤権をすべて手にしながら過去作品の再発もコントロールして自らのキャリアをいたずらにビジネス化されることを周到に避けて時代に合わせた発信を行っていく。こうしたストイックな姿勢と半ばリスナーを突き放した振る舞いがらしくもあり、端的に活動再開を喜ぶ一人として頼もしくもある今日この頃です。