スティーリー・ダン『Royal Scam』

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ジャケットで大分損していると思いますが、実は一番好きかもしれない76年リリースのアルバムです。

ここから腕利きのセッション・ミュージシャンを曲毎に、パート毎に起用するスタイルが本格化しました。次作の『彩』や『ガウチョ』で花開くその手法は既にこの時点で完成の域に達しており、かつここでは曲が全般的にいい。まだバンドだった頃のスティーリー・ダンのグルーヴが残っていて、がつ楽曲自体も複雑さと自然さが曖昧に混在した非常に味わい深いもの。この素晴らしさに気付くには少々時間を要しました。最初に聴いた時は少し地味に感じたんですね。

『彩』にある部分的に強烈なインパクトがここにあるかというとそうではない。しかし楽曲に冗長さがないように思えます。勿論『ガウチョ』程の過度な緊迫感もなく軽やかに曲が進んでいきます。参加メンバーのネームバリューに踊らされる聴き方をしなくても自然に体に楽曲が染み渡ってくる。リズムも端正に揺れていてとてもカッコいい作品に仕上がっています。「ハイチ式離婚」あたりまではほぼ鉄壁だと思います。