前期スクイーズのラストを飾る82年作。ここから陰影が加わります。
度重なるツアーに疲れてここで一旦バンドは解散する訳ですが、本作に見られるどこか愁いを帯びたような成熟は、その後のスクイーズに重要な要素として格納されていきます。初期の勢いのある音も勿論いいですが、どこかに軽さがあって長く聴いていくには若干の躊躇があった。それがこの作品では賞味期限の長い、後々に発見を誘発する音楽に変わっていきます。グレン・ティルブルックが後年「意外と好きな曲が入っている」と発言したのも宜なるかな。
スクイーズのピークは『Frank』にある、と考える自分のようなリスナーにとってはこのアルバムで発生して来た陰影はむしろ歓迎すべき要素で、シンプルさの中にもどこか複雑なコード感やリズムに身を委ねる楽しみがそこかしこに詰まった作品であるといえます。熟してからがいい。何事もね。