ムーンライダーズ『T・E・N・Tレーベル 30th Anniversary MOONRIDERS IN T.E.N.T YEARS 19851986 』『ANIMAL INDEX』

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ビートニクスに続いてムーンライダーズのTENT期の作品もボックス化されました。これは嬉しい再発です。

内容的には当時のオリジナルアルバム2作品とアーカーヴのライブ盤、更に映像集も付けて何と岩井俊二監督の『毛ぼうし』まで入っているという豪華仕様。文句の付けどころがないですね。当時ムーンライダーズは結成10周年。鬼のように働いていた時期ですので鬼気迫る作品集となっているのは必定。個人的にも初めてムーンライダーズに触れたのがその直前の『アマチュア・アカデミー 』でしたので印象に強く残っている時期でもあります。

まずは『ANIMAL INDEX』から。当時高校生でしたが、前作が一部周囲の人も含めて評判が良かったことから期待して聴きました。1曲目の「悲しいしらせ」。まずはここから始まる訳ですが何という混沌。一度聴いただけでは全容が理解できませんでした。非常に不思議な曲だし複雑に出来上がっている。あっという間に虜になりました。輪郭が分かるまでしばらくかかりましたが今でも大好きな曲です。かしぶち哲郎の息子さんもお好きだそうで。

作品としては各メンバーが2曲ずつ持ち寄って超個人作業で作られた作品集ですが、よく言われるように不思議と統一感が出ている。第7のメンバーが頭をもたげて来ているのか、あるいは端的にボーカルが鈴木慶一に統一されているからなのか。恐らく双方でしょう。

一番好きな曲は「歩いて、車で、スプートニクで」です。これは坂本龍一も当時一番好きだと言っていましたが、何といっても記憶と記録という素晴らしいテーマが提示された記念碑的な楽曲で、このテーマは鈴木慶一の久々のソロ作品でも再来しています。時間をテーマにした楽曲は壮大で普遍的な哲学を提示する。何より曲がカッコいいのが一番です。

「駅は今、朝の中」もいい曲ですね。まるで映画音楽のようです。かしぶち哲郎の追悼コンサートで鈴木博文が涙ぐみながら歌っていたのを思い出します。何と映像的なんだろう。「夢が見れる機械が欲しい」の詞の世界が千葉の団地をモチーフにしたものだという事実は今回初めて知りました。当時野宮真貴さんがその辺りに住んでいたそうなんですが、果たしてどこの風景なんだろう。幕張か、稲毛か。幕張は高層マンション街ですが、雰囲気的には稲毛の団地の風景の方がしっくり来ます。果たしてあれが未来かというとちょっと前時代的なようにも思えるので、もしかするともっと千葉寄りの方かもしれません。同様のロマンチズムはキリンジの「エイリアンズ」でも表現されていますね。

音の方はリマスター効果が絶大かというと左程でもなくて、ちょっと拍子抜けしましたが、これがCDメディアとしては恐らく最終形でしょう。ジャケットの再現も重厚で、満足度は非常に高い。ゆっくりと味わっていきたいと思いますが、既に聴き倒している作品なので新たな発見は流石に少ないかな。