キリンジ『3』

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キリンジの最初のピークは恐らくこの3rdで訪れたんじゃないでしょうか。シングル曲が沢山入っていることもありますが、それまでのどこかマニアックな佇まいが世の中に対して開かれて来たような、そんな感触のある傑作だと思います。

代表曲にジワジワとなっていった「エイリアンズ」が描く郊外の冷たい風景はムーンライダーズの「夢が見れる機械が欲しい」で描かれた千葉の風景と恐らくは出身の埼玉の風景がリンクして団地のもたらす凶暴性とクールな佇まいがあくまで温かく迫ってきます。

「グッデイ・グッバイ」「悪玉」といった素晴らしいバランスの佳曲も良いですが、何といってもラストの「千年紀末に降る雪は」での批評性。ここに極まれりという成熟したセンスの良いポップスはポスト渋谷系の金字塔であり、他の追随を許さない魅力と普遍性を携えています。

若干前半が派手で後半が地味、といった構成に結果的になっているようにも思えますが、後半の暗さが次作以降に継続されていく流れのように見えるのは気のせいでしょうか。