キリンジ『For Beautiful Human Life』

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EMIに移籍して再度冨田恵一と組んだ中期の傑作。冒頭の「奴のシャツ」から骨太のロックで印象を変え、2ndの「恋の祭典」と並ぶ名曲「愛のCoda」で必殺技のポップスを披露するという流れです。この2曲は本当に良く聴きました。

歌詞の世界が以前にも増してエッジが立っており、健在をアピールしていますが、サウンドの方は緊張感が過剰なまでに研ぎすまされてきていて、しばしの躊躇を生みます。この後はセルフプロデュースで打ち込みの方向に舵を切っていくので、生楽器の味わいが聴けるのはここまで。構築形の楽曲も徐々に減っていってよりシンプルになっていく流れが弟の脱退で再度器楽寄りになっていくという経過を今のところ辿っています。

後半のグルーヴィーな展開はオリジナル・ラヴの『風の歌を聴け』にも近い濃密度ですが、やはり白眉は「愛のCoda」ということになるでしょう。無敵感の漂う5作目です。