ピチカート・ファイヴ『ROMANTIQUE '96』

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これは比較的好きなアルバムです。『オーヴァードーズ』や『ボサノヴァ2001』には及ばないものの、当時のスピード感を体現していて立て続けに振り込まれる楽曲群の連続技に息つく暇もない程。ただ少し陰りも見えてきたかな。次作以降でそうした影は成熟度とペシミスティックな世界観で彩られて少しずつ終末に近づいていく。その直前の、絶頂期を過ぎた時期の徒花。

95年ということは地下鉄サリン事件阪神大震災が起こった年で、これ以降ポストモダン社会がスタートします。ということはそれまでは終りなき日常が続いていた訳で、ここまでが広い意味ではバブルのようなものです。従ってこれ以降ある種の寂寥感が音楽にも訪れていくのは必然。これ以前に狂騒が存在するのも理屈としては符合しています。ということはピチカート・ファイヴの活動期間は時代の分かれ目を見つめてきたということになります。それが音楽にも出てしまっている。

象徴的なのはラス前に配置された「悲しい歌」という曲。とても切なくていい曲で、何かひとつの時代の終りを予感するような感覚を残します。ここで幕を下ろすのはとても印象的です。