堀込泰行『CHOICE』

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キリンジの弟、堀込泰行の1stは驚いたことにカバー集でした。元々はノーナリーヴスの西寺郷太ビルボードに立ち上げたシリーズのようですが、往年のヒット曲、ニック・ロウから始まってドアーズやキャロル・キング、果てはロイ・オービンソンの「プリティ・ウーマン」まで、結構ベタな選曲で迫ってくる意外な展開です。

音がまた凄い。キーボードの伊藤隆博と二人きりで仕上げたラフな、というより昔のインディレーベルの音のような仕上がり。本人は引き算を主張していますが、このローファイな仕上げはパンクにも通じるものがあります。これが堀込泰行の世の中に対する答なのか。

思うに非常に活動の第一歩に慎重になっている気がします。最初のリリースはアナログ7インチと配信のみのシングル、そして1stは企画物のカバーアルバム。そして音はローファイということで、自ら踏み出す第一歩の方向性が定まらずにいるのではないでしょうか。この辺りの迷い具合もフリッパーズ・ギター解散後の小沢健二に酷似していて、仮にそうであれば堀込泰行はこの後大ブレイクすることになります。今はまだそこまでの過渡期、と捉えると考え過ぎでしょうか。

兄が意外な形でのバンド拡大路線に行き、順調に活動をスタートさせたことも、小山田圭吾が自らのレーベル、トラットリアを立ち上げて順調に活動をスタートさせたことに似ていて、つくづく興味深い。それを横目で見ながら様子を窺う弟の意図とは。と勝手に妄想していますが、本人は飄々としていてそんなことはハナから気にしていないようにも思います。なかなか楽しい展開ですね。

やはり「So Far Away」がベストトラックです。