HAT『Tokyo - Frankfurt - New York』

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96年リリースの細野晴臣、アトム・ハート、テツ・イノウエによるユニットの1st。

この辺りの細野晴臣の一連の作品はアンビエント後の時期とあって実は聴いていませんでした。しかし96年という年はデイジーワールドを立ち上げてスウィング・スローやビル・ラズウェルとの共作等をリリースし、アンビエントの海から陸に上がりつつあった時期ですので、今から振り返るとターニング・ポイントになっている年となります。そしてこの後にハリー&マックにも繋がっていく。

内容はほぼ想像通りの音でしたが、まだエレクトロニカの波も来ていないので、後のスケッチ・ショウのような繊細な音にはなり切れていない。ただ、こうした電子音への憧憬はニューオーリンズへの興味と同居しながら一貫して続いていたんだなと思わせる内容で、過渡期としての興味深い傾向ではあります。今からすると何と20年前になる訳ですが、ここから起き上がってきたんですね。そして今はルーツ・ミュージックの旅へ出ている。

世紀が変わる前ですので、まだ世紀末への憧れは生きていた。そして震災後のポストモダン突入の時期でもある。すべてがこの時期から立ち上がっていた。永遠に続く変わらぬ日常をアンビエントの海の中で過ごし、社会の変化に応じてゆっくりと立ち上がる。そして原点回帰へ。そんな流れに思いを馳せることのできる作品として理解しました。