ピチカート・ファイヴ『スウィート・ピチカート・ファイヴ』

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92年にリリースされたこの作品で自分はピチカート・ファイヴを初体験しました。それまでは細野晴臣のノン・スタンダードからデビューしたということ以外に左程の知識はありませんでしたが、ボーカルに野宮真貴を据えて何か新しいことを始めているらしいという雰囲気だけは察知していたので、かなりポップ寄りになったと言われていた本作に手を伸ばしてみた。結果とても気に入りましたが、その後も独特の印象を変わらず保ち続ける作品です。

まだ当時は渋谷系等という言葉もなく、かつ全盛期の勢いは感じられないものの、萌芽はそこかしこに。最も好きな曲はラストの「コズミック・ブルース」です。ここでミーターズをサンプリングするセンスには脱帽しました。既視感のある音、しかし編集感覚を音楽に本格的に持ち込んできた存在感が際立っていて、かつ野宮真貴がアイコン化して全体を牽引する。その背後には小西康陽が控えていて理論武装がきっちりとなされているという不思議なユニット。それらがまだ一体の音楽として集約されていた。本作はそんな時期の作品です。

翌年の93年が「スウィート・ソウル・レビュー」の発売年ですので、まさにブレイク寸前。うねるベースラインと共に時代を先導していく直前のエッセンスが凝縮されている良作だと思います。不思議と飽きないのはその品の良さに原因があるのではないでしょうか。