トッド・ラングレン『Runt』

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トッド・ラングレンをまともに聴き出したのはご他聞にもれず88年のCD再発からですが、この1stはとても印象深くてその後もずっと聴き続けています。ナッズ解散後、ひとりでエンジニアの勉強をしてベアズヴィルに雇われて制作した作品で70年のリリース。やはりここには原点の煌めきが詰まっていて、朴訥とした雰囲気と珠玉のメロディの萌芽が時代と共に収められています。

音がオルタナティヴのようなローファイの質感があって、かつ構築感もある。初期のトッドの録音にはバッドフィンガーの3rdなんかもあったりしますが、この時代ならではの凝り方が音に現れていて微笑ましい。余り古さを感じさせないのはきちんとしたコーラスワークと時代を超えたメロディにあるのでしょう。いつ聴いても瑞々しく聴こえます。

これといった突出曲もないんですが、1stシングルの「We Gotta Get You A Woman」や小品の「Once Burned」、「Believe In Me」等、抗えない魅力を持った楽曲がさりげなく提示されていて、気負いがないものの方がむしろ耳に残ります。意外とロック寄りのうるさめの曲は余り残らない。

アンペックス盤の初期バージョンが一時期話題になりましたが、今では再発で簡単に手に入るようになりました。CD再発される前はきっと貴重盤の極地だったんだろうと思いますが、その際にもこちらをじっと見つめるジャケットが記憶に残ってファンの脳内を駆け巡っていたんでしょう。因にRuntはパティ・スミスがトッドにつけたあだ名だったと記憶しています。