トッド・ラングレン『Faithful』

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カバーアルバムというのは世に数多あれど、完コピで通すというのは余り例がないのではないでしょうか。LPでのA面すべてをビートルズビーチ・ボーイズヤードバーズ、ジミヘン、ボブ・ディランといった楽曲のカバーで埋め尽くした不思議なアルバムですが、これも良く聴きました。

カバーした楽曲が自分の趣味と完全に一致していた、とコメントしていたのは鈴木慶一でしたが、中でもビートルズの「Rain」のカバーがカッコよくて自分は好きでした。ドラムの練習によく使わしてもらったものです。しかしこうした偏執狂的なアプローチを何のてらいもなく行ってしまうのもトッドならではと言えるでしょう。

翻ってB面はオリジナル楽曲なんですが、こちらの層が薄いという評価は間違っていると思います。何といっても「Love of The Common Man」や「Cliche」といった必殺の楽曲が入っているのがミソで、前者は矢野顕子もお気に入り。後者は本当に美しい曲で、自分の結婚式にも使用しました。

ビートルズ愛は後のユートピアでもパロディアルバムを作ってしまいますので、本当に好きなんだろうと思います。何故トッドがジェフ・リンのようになれなかったのか。それは恐らく人柄なんだろうな、と思いつつ昨今のリンゴ・スターのバンドへの参加を微笑ましく思う今日この頃です。