WORLD HAPPINESS 2016

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今年も行ってきました。夢の島では最後の開催ということで、若干今後の不安を憂慮しつつの参加です。正直なところ、初期よりは大分混雑も控えめになってきている気がするので、快適さは増しましたが、果たしていつまで継続できるのか、という不安がよぎります。

出演者は定番化しているアーティストが多く、そういった意味でも新鮮味に欠けるきらいはどうしても残ります。それが今回のコンセプトだということなのかもしれませんが、やはりちょっと寂しい気がします。各々のアーティストのパフォーマンスは素晴らしいので勿論納得はしたんですが、驚くような瞬間に出会えることは少なくなりました。

矢野顕子は「ひとつだけ」を歌ってくれたことだけでまずは感謝。何度聴いても涙腺が緩んでしまいます。ゲストに現れたSeihoという人を観ていて思ったのは、矢野顕子にとってパートナーの移り変わりがこの人の歴史のひとつになっている、ということでした。もしかしたら矢野誠坂本龍一でさえも含めて、その後のレイ・ハラカミや今回のSeihoに続くひとつの流れの一部だったのではないか。それがたまたま公私を共にしただけ、と考えることもできます。そう考えると、この人のパワーというものは凄まじいものがあると思います。

ムーンライダーズが「活動休止の休止」というスタートをこの場で切ったということには意義深いものを感じます。演奏もしっかりとしていて、尚かつ元気。今回はベースの音が大きくてとても張りのある聴こえ方でした。しかしながら武川雅寛の声はハスキーになっていて痛々しかったし、鈴木慶一も音程を外す瞬間が随所に見られました。ここに感じてしまった衰えは受け止めざるを得ないし、だからこそこの瞬間を見逃してはいけない。前のスペースにいた家族が懸命に薔薇の花を掲げて応援している様を見て、とても健気で美しいものを見たような気がしました。本当に頑張って欲しい。

電気グルーヴの盛り上がり方は前回体験した時ほどではありませんでした。やはりピエール瀧の存在感は圧倒的で、石野卓球がフロントに出てくる瞬間が痛々しく感じられる程です。パフォーマーとしての役割分担をもっとしてしまえばいいのに、と思ってしまいました。音は完璧なんですから。

大森靖子の毒の吐き方は真性の狂気という感触があまりなかったと思います。むしろコントロールされている。以前観たCoccoの方が恐ろしく感じられました。大森靖子が感じていた違和感は以前にきゃりーぱみゅぱみゅも口にしていたアウェイ感なのだと思います。大槻ケンジも発言していましたね。これはやはりテクノでかつ年齢層が高いという客層に対して威圧感、閉鎖性のようなものを感じとっていたんだと思います。しかしながら、テクノが発端だとしてもその前に音楽ファンである訳なので、年配の人は一部を除いては新しい音楽との出会いを決して拒否はしないはずですので、それを一喝してしまうのはやはり違うんじゃないかと思います。というより「若い」ということなのでしょうね。

METAFIVEの演奏はビートが立っていて、特に「Turn Turn」等では楽曲に鋭さが増していたように感じました。ただ、トリとしてはやはり小粒なのは否めない。スティーヴ・ジャンセンを迎えて「君に胸キュン」を演奏するというのは意外な展開でしたが、やっぱり「Stay Close」をやるのが筋なのでは?とも思ってしまいました。

ここへ来て確実に曲がり角に来ていると思われるワールド・ハピネスに次の展開が果たしてあるのか?経済性も含めた課題をクリアしたしなやかな進化が望まれます。カーネーションやスカートもいるし、まだまだ出ていないアーティストも沢山います。規模を小さくしてむしろもっと通好みにしてしまっても良いように思いますが、いずれにせよ今後の展開を見守りたいと思っています。