再集結はちみつぱいのライヴDVDは1988年の再結成ライヴとの2枚組で収録時間が4時間弱となりました。ここまでくると、まるで映画を観るような感覚です。
はちみつぱいは元々老成していたバンドでしたので、今回の再集結で楽曲が年齢相応になってきたような感じがします。とにかく演奏が渋い。メンバーの数も多いからかもしれませんが、音の広がりも奥行きがあってとても響きが良いと思います。88年のライヴ映像にはメンバーのインタビューも挿入されていますが、その中で駒沢裕城が話している「きまりの少ないバンド」という一言が本質を突いている。お手本はザ・バンドやグレイトフル・デッドとなりますが、日本でこうした緩さを伴った形式でのバンドは他になかったのだろうと思います。
はちみつぱいというと「塀の上で」という印象が強かったんですが、改めて今回の映像を観ると、実は渡辺勝の影響力が物凄く強かったことに気付かされます。「ぼくの幸せ」や「夜は静か通り静か」といった曲が実ははちみつぱいを支えている。そして武川雅寛のバイオリンのイントロが始まると寒気を覚えてしまう。「ぼくの幸せ」や「月夜のドライヴ」「センチメンタル通り」といった楽曲でのバイオリンの冒頭の一音がいかに印象深いか。この点も再認識しました。
「夜は静か通り静か」での本多信介の必殺の語りも素晴らしい。この曲は各メンバーの個性がそれぞれに発揮されるもので、映像版では抜群だと思います。鈴木慶一の理想はバンドの各メンバーが曲によって各々ボーカルをとるスタイルですので、その姿はムーンライダーズよりも先に既にはちみつぱいで確立されていたんですね。
88年のラスト・ライブの映像がDVDとして今回再発されたことは誠に喜ばしいですが、約30年の時を経た今の映像の方がやはりしっくり来ます。年齢を重ねた渡辺勝や本多信介の凄みのあるビジュアルは観るものを捕えて離さないし、実際に演奏も歳を重ねて良くなっていると思います。ミュージシャンシップに溢れている。メンバー紹介をされても挨拶もそこそこにおじぎを軽くするだけ。このストイックな振る舞いが人生を感じさせるし、決して前に出ることを好まない、ただ演奏できればいいという価値観を如実に表していて、とても素敵だと思います。
88年の再結成はやはり少し早過ぎたのではないでしょうか。ただ、そこで解散にケリをつけたかったんだと鈴木慶一は発言しています。実は今回の武川雅寛の大病を経ての再集結の方が味わい深い。時間を感じさせる上に、演奏に説得力があると感じました。