少し前ですが、ムーンライダーズの再結成ライブに行ってきました。さすがにこれが最後かなと思い迷った末に参加しましたが、やはり内容は良かった。セットリストはこちらに上がっています。
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今回の「活動休止の休止」最大の契機はかしぶち哲郎の逝去とそれに続く武川雅寛の入院です。鈴木慶一は昨年末にソロアルバム『Records and Memories』を発表しましたが、その中でも触れている「ずっとこれまでと同じではない」という実感から残り少ない友との邂逅を活動45周年コンサートやはちみつぱいの再結成、そしてムーンライダーズの再始動に求めた。やはりトピックは武川雅寛の出なくなってしまった声にある訳ですが、そのハスキーなボーカルから今回のコンサートはスタートしました。「マニアの受難」という驚きの選曲からのスタートですが、そのボーカルの痛々しいこと。というより迫力すら感じてしまう。これはきっとあえてやっていることなのだと思います。
ステージ中央には『最後の晩餐』のようなテーブルが置かれ、メンバーが横一列に座っていてスポットライトがあたります。そこで「マニアの受難」を皆でアカペラで歌っているという演出ですが、これは一般リスナーには理解できないオープニングだと思いますし、もっと言えば相当ライダーズを好きでないと受容できないのでは?と感じたのも事実。でもいいんです、これで。
冒頭の「マニアの受難」もそうですが、その後に続く「花咲く乙女よ穴を掘れ」から「インテリア」あたりまで続く『カメラ=万年筆』『マニア・マニエラ』感といいますか、中期のニューウェーブ全盛期の頃の勢いのある演奏を聴いて、「選曲が若いなあ」と思っていました。非常に演奏が骨太で、この演奏力の確かさはワールドハピネスでも認識した側面です。
「静岡」というマニアックな選曲で何が起こるかと思ったら、鈴木慶一が客席に降りていって、観客から祝福のコメントをもらうというアクロバットな演出。会場入りした際にやはり客層の年齢層の高さに改めて驚いてしまったんですが、コメントしたお客さんもやはりベテランの方ばかりでバンドの歴史を感じさせますし、全国から集まっていることからも愛情の深さを思わずにはいられません。でも自分の隣は若い女性だったので、比率は低いながらも若いリスナーへ音楽が引き継がれていることもきちんと確認できた一日でした。
後半の盛り上がりはいつも通りで、逆に自分はしらけてしまったんですが、アンコールは先日うたもののソロを出したばかりの岡田徹ボーカルによる「さよならは夜明けの夢に」で始まる渋さ。40年経って歌うことにためらいがなくなったというのは感慨深い事実でもあります。それでいい。残り少ない時間の中で自然とこうした衝動が浮かび上がって来ることがきっと大事で、こうした感慨は昨今の矢野顕子のさとがえるコンサートでのTin Panとの邂逅にも感じられます。
まだあるか?再結成。それともこれが本当に最後か?期待しないで待つことにしますが、やはり目撃し続けていくことがファンの役割だなと当たり前のことを思ったコンサートでした。「ありがとう」とだけ言いたいです。