METAFIVE『METAHALF』

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今年はMETAFIVEが活躍した年でした。高橋幸宏の次々つくるバンドの中でも最も成功したものになったような気がします。ご本人は気負わずにやっていると思いますが、結果として80年代テクノポップ黄金期の遺伝子と、それを正統に受け継いだ者たちの現代へのアップデートが自然な形でブレンドされている希有なパターンのアウトプットが受容されたという事実は記憶に残しておく価値があると思います。

本作はタイトルから分かるようにミニアルバムですが、収録された音には相変わらず貫禄があって、日本の音楽が品質として洋楽とほとんど区別がつかないところまで来ていることを如実に表すものとなっています。

新旧の音のブレンド具合は本当に絶妙で、砂原良徳はいつも通りいい仕事をしているなあと冒頭の「Musical Chairs」を聴いて実感します。高橋幸宏は昔からさりげなくかつ派手にリズムのトラップを楽曲に仕掛けますが、今回も「Chemical」でスネアのタイミングを曲途中でずらして聴く側のリズム感を一瞬戸惑わせる技を披露しています。いやあ、健在だなあ。

ラストの「Submarine」なんかを聴いていると、やはり幸宏節がそこかしこに現れていて、古くからのリスナーをニヤリとさせます。これこれ、80年代初頭にこのリズムがあったんだよ、とオールドファンが言いたくなるような仕込み。ただそれだけに終わらないところがMETAFIVEの強みでしょう。自分の弟もMETAFIVEを聴いているようで、YMO系統じゃない洋楽系のリスナーの耳にもしっかり届いているんだなあと認識をした次第です。

これ、この後どうするんでしょう。例によって数あるバンドのひとつとして不定期に活動していくんでしょうが、ちょっと他とは起こしたムーヴメントが違う気がするので、意外と丁寧に扱った方がいいような気がします。きっと周囲がそうさせるんじゃないかな。そうなってくるとまた少し展開が違うんですが、今のところは不明です。星野源ではありませんが、思い切りメジャー化させるのもひとつの手ではないかと思います。こちらも期待しないで待つことにしましょう。