トッド・ラングレン『Box O' Todd』

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トッド・ラングレンの71年から73年にかけてのスタジオライブを3枚組にしたボックスセットが出ていたのは随分前から知っていましたが、この年末にやっと手にとることができました。これ、一体どういう代物なのか、発売当初は分からずにいましたが、聴いてみるとなるほど貴重。初期のライブ音源の割には音もいいし、一連のアーカイヴものの延長として大いに楽しめる内容となっています。

まずは71年6月フィラデルフィアでの録音。この頃はハロー・ピープルと一緒にライブをやる機会が多かったんですね。71年6月というのは2ndの『The Ballad of Todd Rundgren』がリリースされた月ですので相当古い。曲目も「Believe in Me」や「Be Nice To Me」といったエヴァーグリーンな楽曲に加えてかなり初期段階での演奏となる「It Wouldn't Have Made Any Difference」や「Ooh, Baby Baby」のカバー等、珍しい演奏も入っていてとても嬉しい内容です。ハロー・ピープルの曲はあまり馴染みがないので左程内容は理解できていませんが、演奏はタイトでとても良いと思います。

次の2枚目は72年5月の録音。時期的には『Something / Anything?』発売直後のタイミングです。ライナーにもある通り、この時期は1stシングルの「I Saw The Light」が売れ始めた頃ですので、トッドに対する周囲の反応が変わり始めた時期。ステージに求められる要素も変わってこざるを得なかったと思いますが、ここでもまだハロー・ピープルとの合同ライブ。初期の「Dream Goes On Forever」なんかも聴けます。「Piss Aaron」の弾き語りは以前のライブ盤でも収録されていたことがありましたが、結構初期には演奏されることが多い曲だったんですね。語りと共に非常にラフな演奏であることが多いですが、よく間違えますし、とても性格を表していて微笑ましい。

そして最後は73年の11月ということで、ここではトッド・ラングレンズ・ユートピアが出現します。ユートピアの1stがおよそ一年後のリリースですから、データが本当だとするとかなり早い段階での発表となります。時期的には『Wizard』と『Todd』の間くらい。従ってその頃の曲も収録されていますが「Hungry For Love」のライブ音源なんてのは結構珍しいのでは。最後は「The Ikon」で締めくくられます。

トッドの初期70年代前半は目紛しく変わる演奏スタイルとメジャー一直線でスターダムにのし上がっていく過程が恐らくは大変な環境変化であっただろうことが窺える怒濤の時期に当たります。そのためこうして時系列にライブを聴いてみると、その内容の変化に聴く方も驚く一方、一貫してメロディアスでかつグニャッとした声で話すスタジオ偏執狂男の姿が目に浮かぶ録音となっています。有名な蝶のメイクをあしらったジャケットは日本編集ベスト盤で有名になりましたが、グラムロック一歩手前のこの時期ならではの風貌として美しく目に焼き付けておくべきものとして認識しておこうと思います。

まだまだ出るトッドのライブアーカイヴ。ザッパもそうですが、大量の音源でいつまでリスナーを釘付けにし続けることができるのか。興味深いと同時についていけるかどうか心配です。