81年という年はYMO関連の活動においてとても重要な年で、この年に『BGM』と本作が立て続けにリリースされています。坂本龍一が韓国から帰ってきて元気な時に作られたレコードなので、そのあたりの影響がそこかしこに。「Seoul Music」は端的な例ですが、ここでむしろ注目したいのは細野晴臣作の「灰色の段階」ではないかと。本作唯一の細野単独自作曲でありつつ、独特の浮遊感とじわりと盛り上げていく手法が秀逸この上ない。世紀が変わってからのライブでの再演は本当に嬉しかったなあ。
もう一点。「Stairs」での坂本龍一のピアノソロ、これが素晴らしい。低音のリフレインも良いですが、やはり中盤でのソロパートでしょう。これは1stの「Mad Pierrot」のピアノにも匹敵する演奏だと思います。
工場に対する愛情表現は後のウィンターライヴやビートニクスの『出口主義』で顕著になっていきますが、「Prologue」「Epilogue」でのサンプリングが発端かと思います。発売当時、まず耳を奪われたのがこのサンプリングの音で、「Neue Tanz」でのケチャや「Seoul Music」でのコーラス等にも驚かされました。
YMOはここで終わっていてもおかしくなかった訳ですが、その後の休養を経て歌謡曲への挑戦、というよりファンサーヴィスにしばし時間を割いた後の散開という経緯を辿ります。そういった意味でも81年の活動は重要で、この年にテクノポップのほぼすべての要素が凝縮されているといっても過言ではない。メンバーの多忙な活動は確実な躁状態で、勿論長続きはしません。
そんな中でも本作から聴こえてくるソリッドな音像は今聴いても魅力的です。『BGM』のヨーロピアンな魅力も勿論捨て難いですが、よりフィジカルになったここでの力強い音は覚醒と共にパワーをもらえる音楽です。