糸井重里『ペンギニズム』

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80年にリリースされた糸井重里の作品はプロデュースを鈴木慶一が行っています。そのためこの中古品もムーンライダーズコーナーで見つけました。恐る恐る聴いてみましたが、感覚的には『モダーン・ミュージック』的。時期的には『カメラ=万年筆』の直後なんですが、そこまで実験的ではなく普通のポップスに仕上げられていて、どことなく漂うニューウェーブ臭が時代を感じさせて微笑ましく聴こえます。

細野晴臣矢野顕子もソングライターとして参加していて、特に矢野顕子に関しては後にセルフカバーされる「Super Folk Song」の原形が収録されています。それだけでも貴重ですが、全編に渡って結構丁寧なプロダクションがなされており、元々が歌のあまり上手くない鈴木慶一のテイストが糸井重里に乗り移っていて、まるで鈴木慶一のソロ作品を聴いているかのような錯覚を覚えます。

その後、糸井重里ムーンライダーズの歌詞提供にも名を連ねて「花咲く乙女よ穴を掘れ」「ニットキャップマン」といったキーポイントとなる楽曲を産み出していく訳で、その原点がこの作品にあるのなら、ここでの邂逅は重要な分岐点になっているように思えます。

後半はPANTA&HALによる演奏。鈴木慶一の最初のプロデュース作品が79年の『マラッカ』だったことを考えると、この『ペンギニズム』も初期のプロデュースワークとしてとても重要な記録になっていると捉えることも出来ますね。