奥田民生『サボテンミュージアム』

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奥田民生の新作はバンドサウンドが復活しているとの噂。これはもしやひとり単独演奏からの揺り戻して、かなり熱量の高い演奏が期待できるのでは、と思って期待して聴きました。

収録時間はトータル11曲で38分強と短め。ということは1曲あたりが短いということになります。実際2分台の曲が多く収録されており、とてもコンパクトな演奏が続きます。ビートルズの初期のようですね。しかしながら、勢いのある演奏とは裏腹に曲が頭に残らない。近作では単独演奏のこじんまりした佇まいがあったものの楽曲としては光るものが多かっただけにちょっと残念です。

むしろ後半の比較的長尺で若干大袈裟な曲の方が何故か印象に残ります。「歩くサボテン」なんかは暗めの曲なんですが、XTCの『Black Sea』でラストの「Travels In Nihiron」が妙に印象に残るように、ここでの余韻は何とも言えない痕跡を耳に残していきます。その後のライブか疑似ライブかよく分からない演出の楽曲や、ラスト曲に至る妙な迫力、それは一発録りの生演奏の迫力とは異なる奥行きのあるバンド演奏で、かつカラッとしていない。この暗さが妙な後味を残します。

想像していたよりも謎の方向に歩み出したような気がする新作でした。