ニック・ロウ『Pinker And Prouder Than Previous』

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ニック・ロウ88年リリースの7作目はたまに中古屋で目にしていて、なかなか手を出さずにいた作品でした。今回初めて聴きましたが、プロデューサー含めてエルヴィス・コステロの『ブラッド&チョコレート』の布陣に近い。音の質感もあそこまで尖ってないとしてもそこそこアーシーでいい感じです。やはり地味なのは否めませんが、88年でこの音の質感というのも凄い。変わらず続けている職人芸のような趣がありますね。

収録時間も30分足らずと短いのは曲自体の長さが短いから。ここにはコンパクトならではの濃密さまではありませんが、潔くて好感が持てるしシンプルで聴きやすい。しかし印象にも残りにくいという難点も。やはりコステロ程のアクがない分、ボリュームがないときつい。それでも『ニック・ザ・ナイフ』のようにキレキレなら問題ないんですが、残念ながらそこまでの切れ味は期待できません。渋い、とにかく渋いのはこの近辺でリリースされているジョン・ハイアットにも近い。実際にニック・ロウ自体も『ブリング・ザ・ファミリー』には関わっているようです。

リリース時にほとんど自分のアンテナに引っかからなかったということは余程興味対象から外れていたか、本作自体がプロモーションされていなかったかのどちらかでしょう。いや、恐らく双方かな。これからじっくり時間をかけて味わっていけそうな音でした。