白井良明『FOR INSTANCE』

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白井良明の活動45周年の新作は予想通りインスト中心でした。本来ポップセンスも十分で、歌ものでも自在に楽曲作りを行うことができる方ですが、ここでは1曲を除いて全てインストで勝負しています。

まるでギターで歌っているかのようで、まるでギターで喋っているかのようです。セルフカバーの「トンピクレンっ子」などに顕著な強烈な自己解釈は、声の代わりにギターの音色が鳴っていて、ああこれが晩年の白井良明の表現なんだな、と思い知らされます。それがいいかどうかは置いておくとして、事実としてそうだということ。

新曲が少ないのが気になるので、考え方としてやはり自らのアイデンティティ演奏家にある、ということを改めて自覚した、という風に捉えればよいのでしょうか。だとすれば非常に勿体無くて、例えゲストボーカルを多彩にしていたとはいえ『portrait of legend 1972-2012』にあったような路線が失われてしまうのはとても悲しい。

白井良明の今がこれだということは疑いようのない事実ですので、それを受け入れた上でやはりボーカル回帰へ向かって欲しいと切に願うばかりです。とはいえ前作よりギターが言葉になっていて、これはこれでいいかな。