こちらも初聴き。86年リリースですので『マーシー』まであと4年ということになります。
思い切り時代を感じさせるデジタル系のポップスですが、細野晴臣やデヴィッド・シルヴィアンなんかも参加していて、まだ華やかだった頃の残り香がほのかに感じられます。久保田麻琴が本領を発揮するのはむしろ90年代からで、アジアを横断するような音作りを見事に成し遂げて行きました。その前にこの作品は位置している。
それは華やかではあってもどこか虚しくて、派手ではあっても何となく耳を通り過ぎて行ってしまう。86年がどんな年だったかというと、細野晴臣はテイチク末期、坂本龍一は『未来派野郎』、高橋幸宏はポップスまっしぐら、といった感じで、全般的に時代の勢いが止まるちょっと前、という感じだと思います。今から32年前ですか。
時代の変わり目はディケイドが変わる1年前にその兆候が見え始める。そうすると実は来年はその年になるわけですが、何かもう始まっているような予感もしますね。それが中盤ではまだ分からない。そんな時期の徒花なのではないかと思います。でもポップでいいですけどね。