2枚目はオールディーズのカバーを集めたライブ音源集です。多くの曲ではコーラスのみを従えた弾き語りスタイルでの演奏となっており、大滝詠一の歌のうまさがここでも存分に味わえる演奏となっています。
大滝詠一の場合、このボーカルの技術が自分自身に備わっていたことで、自らの技量をプロデュースすることが出来た。バンドメンバーや他人をプロデュースするのと同様、自分自身の技術も客観的に観察して、音楽の一部として世に差し出している。この辺の多重人格的な考え方が様々な変名を使って作品にクレジットしていた振る舞いに直結していると改めて感じました。
バンド演奏で最も素晴らしいのは81年の『ロング・バケイション』の発売記念コンサート。このディスクでは5曲目の「Fool Rush In」と6曲目の「Shella〜シャックリママさん〜Love's Made A Fool of You」のメドレーでの演奏です。とにかくリズムがファンキーで、おそらくはドラムの上原裕の演奏が素晴らしいのではないかと思います。
そして音がいい。77年のTHE FIRST NIAGARA TOURまでの音源は時代を感じさせない圧倒的なクオリティで収録されています。基本は時代を遡っていく構成になっていますが、後半3曲、76年からの音源から急に音質が落ちる。逆にいえばたった1年でこれほどまでの差が出ているということは、収録方向を77年から変えているんでしょう。
ラストのビートルズ「Yesterday」のカバーは大滝詠一が高校3年生、18歳の頃の音源です。18歳で岩手から上京しているはずですので、その直前の音源、ということになります。こんなものが世の中に出ていくなんて。