YMO『浮気なぼくら』

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後期YMOの一発目は強烈な売れ線で、当時は本当に驚きました。「ゲゲゲッ」と拒否反応がまずはあった。歌謡界に作家として進出していたきらいがメンバーにはあったものの、まさか本体でそれをやるとは思ってもみなかったし、期待してもいなかった。それがこれですので、「参ったなあ」というのが正直な感想です。

 

しかし、その後長い期間をかけて聴いていくと実はそんなに悪いアルバムではない。いい曲もたくさん入っていて、必ずしも企業サイドの思惑だけで構成されている産業音楽ではないと感じるようにもなりました。「君に胸キュン」もバックの演奏は美しいですし、全体的にも音の粒だちは良い。ここは個別にメンバーの変化を追うのが聴き方として正しいと思います。

 

まず坂本龍一の変化は、「音楽」に顕著な美メロ路線。とにかく美しいメロディに目覚めたような感じで、「邂逅」なんかも含めて綺麗な曲が多くなりました。

 

一方、細野晴臣は実は『テクノデリック』やソロの『フィルハーモニー』のアバンギャルドな路線をここでも引きずっていて、結構暗めの色調が目立っています。そんな中でもラストに配された「WILD AMBITIONS」はとてもカッコいい曲です。スタジオのソファーのバネを叩いたとか何とか、リズムに使用されたサンプリングの音はとてもフィジカルでゴツゴツしていて、かなりグッとくる楽曲です。

 

高橋幸宏の甘さがここで目立ってきていて、「希望の河」は今でも嫌いな楽曲です。この甘さがその後のソロ作品から最初に自分が興味を失っていくきっかけとなったことに改めて気付きました。「希望の路」の方はいい曲なんですが・・。

 

ということで、結構色々な要素が詰まっているアルバムで、ここで注目すべきは各メンバーの「変化」である、というのが自分の見方です。